多町(神田市場)の天王祭
天王祭の天王とは、祇園午頭天王(ぎおんごずてんのう)のこと。
祇園午頭天王とは素戔鳴命
(すさのおのみこと)のこと。

神田明神の前身の社は、天平2年(730)武蔵国豊島郡江戸柴崎村(現大手町)の創建といわれています。
延慶2年(1309)に平将門公が祭神として合祀され、神田明神と号されました。
前身の社の、居付きの神(地主神)が素戔鳴命(祇園午頭天王)でした。

慶長8年(1603)徳川家康は征夷大将軍となり江戸幕府を開き、神田明神を神田山(現駿河台)へ移した。
二代将軍徳川秀忠は、さらに元和二年(1616)神田明神を湯島台(現在地)へ移転し江戸総鎮守とした。
神田明神の御祭神は、
平将門命のみ一柱となった。
素戔鳴命(祇園午頭天王)は三社に分けられ神田明神境内に社が建立され神田明神の摂社となった。
三社は「神田(明神)三天王」として江戸幕府に関わりが深く、財力豊かな以下の三つの町の持ちとなった。

神田三天王社
御 祭 神
天王社 一之宮
素戔鳴命
南伝馬町(明治19年1886より神田市場五カ町持ち)
天王社 二之宮
五男三女
大伝馬町
天王社 三之宮
奇稲田姫
伝馬町(寛文六年1633より日本橋小舟町持ち)
神田祭は天下祭として幕府御用の官祭として行なわれていたが、天王祭は各社を持ちとしたそれぞれの町と氏子の町々の民間の費用で行なわれた。神田祭の本社神輿は天下祭の行列の中で、お宮の白丁によって静々と渡御されていったが、荒振る神の素戔鳴命を奉祭する各天王社の本社神輿は、町人によって荒々しく担がれ、江戸っ子の心意気を示した。
一之宮 南伝馬町天王御祭禮

◎旧暦6月7日〜14日
(後に江戸神社とも云われる)
三天王社の中でも最も早く
開幕からすぐの慶長期に祭禮があった。

南伝馬町とは現在の京橋辺で
神田明神から宮出しされた本社神輿は
初日の夕方に南伝馬町の御旅所に納まり
翌日から13日までは
氏子の町を荒振るに担がれ練り歩き
最終日に神田明神に帰社された。
氏子崇敬域は錦絵に詳細に記されている。
通り丁筋(現在の中央通り)の
日本橋と京橋の間を主な氏子としていた。

明治維新後に神仏分離、一戸一神制となり
名称も須賀神社と改称された。
南伝馬町が山王さまの氏子となったため
明治19年に持ちの町が神田青物市場5カ町に変り
名称も旧名の江戸神社に戻った。

昭和33年に復活した神田市場の大神輿は
現在、神田祭の枠組の中で
神輿渡御されている。
素戔鳴命を祀る江戸神社の本社として
天王祭の面影を見ることはできない。

二之宮 大伝馬町天王御祭禮

◎旧暦6月5日〜8日
元和年間(1620頃)より
祭禮が始まったと云われる。

氏子崇敬域は錦絵に詳細に記されている。
大伝馬町二丁目の御旅所を中心に
氏子崇敬域が複雑に構成されているが
神田須田町近辺にまで飛び地の氏子があった。
氏子地域を盛大に荒振るに担がれ
最終日の8日に社地へ戻られた。

現在は毎年6月5日に神田明神境内の
大伝馬町八雲神社に於いて
神事例大祭が執り行なわれている。
関東大震災後に社殿は復興されたが
本社神輿や獅子頭、四神鉾、剣などは
復活していないようである。

いま、大伝馬町では江戸時代初期から続く
毎年10月の宝田恵比寿神社の
通称ベッタラ市が賑やかで有名である。

三之宮 小舟町天王御祭禮

◎旧暦6月10日〜13日
小伝馬町の持ちであったが
寛文六年1633より日本橋小舟町持ちとなる。

氏子崇敬域は錦絵に詳細に記されている。
氏子崇敬域は二之宮の大伝馬町天王と
複雑に絡みあっているが
鰹節の小舟町、魚河岸など財力に富んだ
町で構成されている。
浅草御門前の両国広小路あたりまでの
広大な氏子域を誇った。

現在は4年毎に小舟町内の堀留公園に
絢爛豪華な御旅所を設え
明神境内の社殿より
昭和7年、後藤直光作の3尺7寸の
御本社大神輿を初め、小神輿
四神鉾、旗、剣、太鼓山車などが納まる。
二日に渡って小舟町で挙行される祭禮は
スケールこそ昔には及ばないが
見事に江戸時代の天王祭の文化を継承している。

6月のほぼ同時期に神田・日本橋・京橋と狭い地域で挙行された絢爛豪華な三つの天王祭は
本社の神輿を町人が荒振るに担ぎ廻る特別な祭禮であった。
残された数多くの錦絵や文書からは、天下祭の神田祭とは異質な
熱狂的な興奮を醸しだしていたのであろうと、読み取ることができる。
この3つの町は天下祭に於いても重要な役割を果たしていた。すなわち・・・
神田・山王の両祭禮に於いて一番山車「大伝馬町の鶏」二番山車「南伝馬町の猿」は定番であった。
また小舟町は山車は出さないが、きわめて揉め事が多い「獅子頭」の警護役を担っていた。

錦絵提供:黒川治良氏

神田明神の境内に鎮座する三天王社
一之宮
江戸神社
二之宮
大伝馬町八雲神社
三之宮
小舟町八雲神社
正面がガラス張りなのでいつでも
神田市場の大神輿を見る事ができる。
大伝馬町の2尺5寸の大神輿が
納められているらしいが・・・?
小舟町天王祭は4年毎に挙行。
神田祭時に社殿を公開する事がある。
小舟町天王八雲祭 平成13年4月 豪勢な御旅所前を渡御する御本社大神輿(S7後藤直光作・台輪3尺7寸
三天王の本社神輿が描かれている錦絵 京橋上空から日本橋・神田方面を俯瞰している
三之宮 小舟町天王社 本社神輿宮出
左上には神田明神大鳥居。中央に荒振るに担がれる本社神輿。右前方には先行する大真榊と四神剣。

錦絵提供:黒川治良氏